それは遠い星の話。
見渡す大地に生きる生き物や植物たちが、言葉を持ち、道具を使う知識ある暮らしを送る世界。ここは辺境の銀河に光る星、青き水と緑多き惑星トレーベル。この星の北側に、空から見た緑がひときわ深き森となっている場所が、この物語が始まるノイエルの森である。多くの動植物が暮らす中、緑や、赤、黄色にオレンジ色など、鮮やかな色をしたカエルの妖精たちが暮らしている。毎日を朝日とともに起き、緩やかな時間の中、何かに追われることもなく、今日見つけた小さな楽しみに笑顔する、のんびりとした生活を送っていた。
今日も変わらない朝を迎えた森の中、小さく流れる小川で遊ぶ二人。
枝葉に降り注ぐ白い露。朝霧があったのだろう。二人は雫に少し濡れながら、小川に沿って歩いていた。
「ね?ねえ。も、冒険オワリ?まだまだ行くよね?」
話を切り出したのは、乳白色の体に角のように飛び出した目をもつ、足つきかたつむりのトッツィ・ピピン。背中には体がしまえるとは思えない大きさのかわいい殻には見えない家を背負っている。和やかに返事をするのは、リーフグリーンの色をしたカエルの妖精ワンダ。ふたりは家に帰る道、冗談混じりの楽しい会話をしている。
「そうだね。今夜ゆっくり寝たらまた朝日に向かって出かけようか。」
「長老に今までのことを話したらビックリする?かな?」
「どうかな。お前、またアホ呼ばわりされるかもよ。」
「ア、アア、アホ!? 心外だなー。ボククはね、これでも結構足し算できるんだよ。どう?買物だってできるんだから!」
「うん。うん。じゃあ、いろいろおつかい頼むよ。」
二人は、たわいもない友達会話をあれこれしゃべりながら、村へ戻ってきた。もう、太陽はとっくに寝てしまい、空には青白い月が顔を出していた。
朝はやってくる。この季節の朝日はずいぶん早起きをして空の境界線から顔を出す。ワンダとトッツィは、早速そんな一日の始まりの光に向かって出かけようと支度をしていた。そこへゆっくりとした足取りでやってきた古めかしい服装のカエルの妖精がひとり。くすんだ緑色をしたしわだらけの体、ねじれた古木を杖にして歩いてきた村の長老ラウル・グレーだった。
「まーた探検か?毎日あきんのーおまえたちは。」
村長の顔を見た二人はニッコリといたずらっ子の顔をして見せた。
「おはよう長老。ちょうど聞きたいことがあったんだよね。」
ワンダは、かねてから行きたいと思っていた、森のはずれにある岩山に祭られている鏡岩について、ラウルに聞いてみた。鏡岩には不思議な力が宿っているらしく、長老とシャーマンしか近づいてはいけないと子供のころから言われていた。場所も道も誰も知らないその場所に、どうしても行ってみたかったのだ。ラウルは大きなため息を漏らし、ふたりをにらみつけた。しばらくにらみつけた後、天を仰いだ村長の口が重く開いた。
「行ってはならん。何も起きなければただの大きな岩、それだけのことなのだから。どうせひまつぶしなんじゃろ?行ってはならんぞ。南のガロック族の岩山に近づいてはならんぞ。」
ワンダとトッツィは村の入り口の門を開けながら答えた。
「岩石人がいるところなんて行かないよ。今日はハルメールの花園にでも行ってみるよ。」
長老ラウルにはワンダの言葉がウソであることは容易に分かった。曇った表情で二人を見つめた。
「そう。二人が行っても何も起きなければただの岩なんじゃ。なにもおきなければなければいいのじゃが。」
不安な気持ちに、ラウルの記憶は、ある黒い本に書かれていた古い一節を思い出していた。
To be continue…….
それは遠い星の話。
見渡す大地に生きる生き物や植物たちが、言葉を持ち、道具を使う知識ある暮らしを送る世界。ここは辺境の銀河に光る星、青き水と緑多き惑星トレーベル。この星の北側に、空から見た緑がひときわ深き森となっている場所が、この物語が始まるノイエルの森である。多くの動植物が暮らす中、緑や、赤、黄色にオレンジ色など、鮮やかな色をしたカエルの妖精たちが暮らしている。毎日を朝日とともに起き、緩やかな時間の中、何かに追われることもなく、今日見つけた小さな楽しみに笑顔する、のんびりとした生活を送っていた。
今日も変わらない朝を迎えた森の中、小さく流れる小川で遊ぶ二人。
枝葉に降り注ぐ白い露。朝霧があったのだろう。二人は雫に少し濡れながら、小川に沿って歩いていた。
「ね?ねえ。も、冒険オワリ?まだまだ行くよね?」
話を切り出したのは、乳白色の体に角のように飛び出した目をもつ、足つきかたつむりのトッツィ・ピピン。背中には体がしまえるとは思えない大きさのかわいい殻には見えない家を背負っている。和やかに返事をするのは、リーフグリーンの色をしたカエルの妖精ワンダ。ふたりは家に帰る道、冗談混じりの楽しい会話をしている。
「そうだね。今夜ゆっくり寝たらまた朝日に向かって出かけようか。」
「長老に今までのことを話したらビックリする?かな?」
「どうかな。お前、またアホ呼ばわりされるかもよ。」
「ア、アア、アホ!? 心外だなー。ボククはね、これでも結構足し算できるんだよ。どう?買物だってできるんだから!」
「うん。うん。じゃあ、いろいろおつかい頼むよ。」
二人は、たわいもない友達会話をあれこれしゃべりながら、村へ戻ってきた。もう、太陽はとっくに寝てしまい、空には青白い月が顔を出していた。
朝はやってくる。この季節の朝日はずいぶん早起きをして空の境界線から顔を出す。ワンダとトッツィは、早速そんな一日の始まりの光に向かって出かけようと支度をしていた。そこへゆっくりとした足取りでやってきた古めかしい服装のカエルの妖精がひとり。くすんだ緑色をしたしわだらけの体、ねじれた古木を杖にして歩いてきた村の長老ラウル・グレーだった。
「まーた探検か?毎日あきんのーおまえたちは。」
村長の顔を見た二人はニッコリといたずらっ子の顔をして見せた。
「おはよう長老。ちょうど聞きたいことがあったんだよね。」
ワンダは、かねてから行きたいと思っていた、森のはずれにある岩山に祭られている鏡岩について、ラウルに聞いてみた。鏡岩には不思議な力が宿っているらしく、長老とシャーマンしか近づいてはいけないと子供のころから言われていた。場所も道も誰も知らないその場所に、どうしても行ってみたかったのだ。ラウルは大きなため息を漏らし、ふたりをにらみつけた。しばらくにらみつけた後、天を仰いだ村長の口が重く開いた。
「行ってはならん。何も起きなければただの大きな岩、それだけのことなのだから。どうせひまつぶしなんじゃろ?行ってはならんぞ。南のガロック族の岩山に近づいてはならんぞ。」
ワンダとトッツィは村の入り口の門を開けながら答えた。
「岩石人がいるところなんて行かないよ。今日はハルメールの花園にでも行ってみるよ。」
長老ラウルにはワンダの言葉がウソであることは容易に分かった。曇った表情で二人を見つめた。
「そう。二人が行っても何も起きなければただの岩なんじゃ。なにもおきなければなければいいのじゃが。」
不安な気持ちに、ラウルの記憶は、ある黒い本に書かれていた古い一節を思い出していた。
To be continue…….